廃棄物の処理を法律に基づいて適切に行うには、廃棄物処理法の知識が必要になります。
廃棄物処理の現場で知っておかなければならない基礎知識について、その背景を含めて解説していきます。
目次
廃棄物処理法の概要
廃棄物処理法の正式名称は「廃棄物の処理および清掃に関する法律」といい、一般的に廃棄物処理法と呼ばれていますが、「廃掃法」と略されることもあります。
もともとは公害対策として制定された法律ですが、現在では、廃棄物を単に適正処理するだけでなく、資源の有効利用推進の役割も担っています。
廃棄物処理法の目的
- (目的)
- 第一条 この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。
ここに記載された目的は次の3点に分けられます。
- 廃棄物の排出を抑制すること
- 廃棄物の適正な処理をすること
- 生活環境を清潔にして公衆衛生の向上を図ること
廃棄物の適正な処理とは
廃棄物の適正な「分別、保管、運搬、再生、処分等」の処理をすることをいいます。
廃棄物の定義
「ゴミ」と同じ意味で用いられている「廃棄物」ですが、廃棄物処理法では次のように規定されています。
- (定義)
- 第一条 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のものをいう。
個別に明記された種類の廃棄物、また、気体が廃棄物でないということはこの条文で明確にわかりますが、「不要物」については明確ではありませんね。この「不要物」については、法律論争になるほどさまざまな説があり、実ははっきりと定められていないというのが実態です。
最高裁判所の判例や環境省の通知では、廃棄物の定義を「廃棄物とは、占有者が自ら利用し、または他人に有償で売却することができないため、不要になったものをいう」としてうえで、次の5項目を総合的に判断して該当するか否かを決めることとしています。
- 対象物の性状
- 排出の状況
- 通常の取扱い形態
- 取引価格の有無
- 占有者の意思
この考え方を「総合的判断説」といいますが、判断を下す人の立場で解釈が異なる場合も多く、廃棄物に該当するか否かは最終的には裁判所の判断を待つしかないため、廃棄物処理の担当者にとっては悩みの尽きないところです。
廃棄物の種類
- 第二条(定義)
- 2 この法律において「一般廃棄物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう。
- 4 この法律において「産業廃棄物」とは、次に掲げる廃棄物をいう。
- 一 事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物
- 二 輸入された廃棄物並びに本邦に入国する者が携帯する廃棄物
一般廃棄物と産業廃棄物
廃棄物処理法では、廃棄物を大きく「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に区分しています。
廃棄物処理法第2条第2項では、産業廃棄物でないものが一般廃棄物であると定義され、その後、廃棄物処理法第2条第4項により産業廃棄物についての規定がなされています。
廃棄物を一般廃棄物と産業廃棄物に区分する理由は、法律で定められた処理責任の主体が違うためです。産業廃棄物は排出事業者が処理責任を負い、一般廃棄物は市町村が適正な処理について必要な措置を講ずると定められています。
廃棄物の区分
図のとおり、廃棄物の種類で区分されているのではなく、どこから排出された廃棄物であるかが重要です。たとえば、家庭から排出される廃プラスチックは一般廃棄物ですが、事業活動から排出される廃プラスチックは産業廃棄物として扱われます。
産業廃棄物とは
産業廃棄物とは、廃棄物処理法に定める20種類の廃棄物を指し、すべての業種で産業廃棄物に該当するものと、対象業種が限定されているものに分類することができます。
業種指定のない産業廃棄物
あらゆる事業活動に伴い排出される産業廃棄物は次の13種類です。
業種指定のある産業廃棄物
特定の事業活動に伴う産業廃棄物は次のとおりです。
たとえば建設現場で排出される「廃木材」は「木くず」に該当する産業廃棄物ですが、レストランで使用していた木製椅子を廃棄する場合、レストランは建設業や家具製造業ではないので、同じ「木くず」でも産業廃棄物ではなく一般廃棄物として処理する必要があります。
また、レストランで廃棄される食べ残しは、「動植物系残さ」に該当しますが、木くずと同様に対象業種ではないので一般廃棄物として扱われます。
一方で、古くなった食用油を廃棄する場合、「廃油」は業種指定がないので産業廃棄物として処理する必要があるということになります。
事業者について
廃棄物処理法には「事業者」の定義について規定した条文はありませんが、法人個人を問わず事業をいとなんでいればすべて「事業者」と判断されることが一般的です。
事業を営んでいる法人には営利目的のだけでなく、任意団体、NPO、学校、宗教団体なども含まれます。
これらすべての事業者が「排出事業者としての責任」を負うことになるので注意しましょう。
廃棄物処理には許可が必要
一般廃棄物、産業廃棄物いずれについても収集・運搬・保管・処理を行うには事前の許可が必要です。
行政書士法人ストレートでは主に「産業廃棄物の処理」に関する許可取得をサポートしています。
産業廃棄物処理業許可取得をご検討している方は是非お問い合わせください。