近年の建設現場では人手不足のため、現場に配置しなければならない主任技術者・監理技術者を、派遣社員や出向社員に任せたいとの要望も出てくるでしょう。
しかし、雇用関係について規定があるため、派遣社員や出向社員を主任技術者・監理技術者として現場に配置することはできません。
出向社員の場合、一定の要件を満たすと主任技術者・監理技術者として配置することが可能になります。
この記事では、出向社員・派遣社員は主任技術者・監理技術者になれるのかについて、建設業専門の行政書士法人ストレートが解説します。
目次
派遣社員・在籍出向者は主任技術者・監理技術者にはなれない
派遣社員や出向社員であっても、資格や実務経験があれば主任技術者・監理技術者になることはできるのでしょうか?
結論から言うと、派遣社員や出向社員は、建設業者との直接的な雇用関係とは言えないので、主任技術者・監理技術者になることはできません。
建設業法の目的は建設工事の適正な施工の確保です。
適正な施工を確保するためには、主任技術者・監理技術者と所属建設業者がお互いの技術力を把握し、十分に活用して業務を行うことができる状態であることが必要とされています。
そのため、主任技術者・監理技術者には、所属する建設業者との直接的かつ恒常的な雇用関係が求められているのです。
主任技術者・監理技術者の雇用関係
主任技術者・監理技術者になるためには直接的かつ恒常的な雇用関係にある必要があります。
では「直接的かつ恒常的な雇用関係」とは、具体的にどのようなことを言うのでしょうか。
直接的な雇用関係について
「直接的な雇用関係」とは、主任技術者等と、その所属する建設業者との間に第三者が介入する余地のない雇用に関する一定の権利義務関係(賃金・労働時間・雇用・権利構成)が存在することをいいます。
派遣社員や出向社員には、このような直接的な雇用関係があるとは言えないため、主任技術者・監理技術者になることができません。
また、直接的な雇用関係については、
- 健康保険被保険者証
- 市町村区が作成する住民税特別徴収税額通知書
によって確認できなければなりません。
恒常的な雇用関係について
恒常的な雇用関係とは、一定の期間に渡って当該建設業者に勤務し、日々一定時間以上職務に従事することが担保されていることを言います。
公共工事においては、所属建設業者から入札の申込のあった日※より3か月以上前から雇用関係にあることが必要とされています。
なお、雇用期間が限定されている継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の適用を受けている者については、その雇用期間に関わらず恒常的な雇用関係にあるものとしてみなされます。
恒常的な雇用関係については、
- 監理技術者資格証の交付年月もしくは変更履歴
- 健康保険被保険者証の交付年月日等
によって確認できなければなりません。
- ①指名競争の場合で入札の申込を伴わないものは入札の執行日
- ②随意契約の場合は見積書の提出日
- (これらの日より3か月以上前から雇用関係にあることが必要)
出向社員が主任技術者・監理技術者と認められるケース
出向社員は建設業者との間に直接的かつ恒常的な雇用関係がありません。
しかし、一定の要件を満たすことで、出向社員が主任技術者・監理技術者として認められるケースがあります。
親会社からの出向社員を出向先の連結子会社が工事現場に主任技術者・監理技術者として置く場合、「企業集団確認」を受けると、直接的かつ恒常的な雇用関係があるものとして取り扱われます。
企業集団確認を受けるには、国土交通省土地・建設産業局建設業課長による認定を受けなければなりません。
企業集団確認を受けるには、下記のいずれの要件も満たしている必要があります。
- ①一の親会社とその連結子会社からなる企業集団であること
- ②親会社が建設業者であり、有価証券報告書提出会社又は会計監査人設置会社であること
- ③連結子会社が建設業者であること
- ④③の連結子会社がすべて①の企業集団に含まれる者であること
- ⑤親会社又はその連結子会社(2社以上ある場合はそれらすべて)のいずれか一方が経営事項審査を受けていない者であること
企業集団確認を受けた場合の雇用関係の確認
主任技術者・監理技術者の直接的かつ恒常的な雇用関係については、通常は健康保険被保険者証や監理技術者資格者証によって確認が行われます。
しかし、企業集団確認を受け、親会社から連結子会社への出向社員を主任技術者・監理技術者とする場合は、下記の書面で確認します。
- ①健康保険被保険者証等による出向社員の出向元の会社との間の雇用関係を確認
- ②出向であることを証する書面(出向契約書・出向協定書)での、出向社員の出向先の会社との間の雇用関係の確認
- ③企業集団確認書による、出向先の会社と出向元の会社との関係が企業集団を構成する親会社及びその連結子会社の関係にあることの確認
- ④施工体制台帳等から、出向社員を主任技術者または監理技術者として置く建設工事の下請負人に当該企業集団を構成する親会社・連結子会社・当該親会社の非連結子会社が含まれていないことを確認
企業集団確認の申請手続きと必要書類
企業集団確認の申請は親会社が行い、確認が行われると企業集団確認書が交付されます。
申請の手続きには、企業集団確認申請書を作成し、下記の書類を添付して国土交通省・建設産業局建設業課に提出する必要があります。
なお、企業集団確認書の有効期間は1年間になります。
1)イ、ロのいずれかの書類 | |
イ 親会社が有価証券報告書提出会社である場合は、申請時の親会社、連結子会社、非連結子会社の体制(以下「会社体制」という。)における①の写し。 ただし、直近の①作成後に、合併等により会社体制が変更になった場合は、直近の①及び②の写しを提出すること。その場合、当該変更後、①を新たに作成した場合は、速やかにその写しを国土交通省土地・建設産業局建設業課長に提出しなければならない。 |
ロ 親会社が有価証券報告書提出会社以外である場合は、申請時の会社体制における①及び②の写し。 ただし、直近の①作成後に、合併等により会社体制が変更になった場合は、直近の①、②及び③の写しを提出すること。その場合、当該変更後、①及び②を新たに作成した場合は、速やかにその写しを国土交通省土地・建設産業局建設業課長に提出しなければならない。 |
①有価証券報告書 | ①会計監査人の監査を受けた、会社法第435条第2項に規定する事業報告 |
②①作成時から変更となった会社体制がわかる資料(当該変更の内容を示す公表資料、登記簿謄本、有価証券報告書の監査人の確認を受けた書類等) | ②会計監査人の監査を受けた、会社法第444条第1項に規定する連結計算書類等で事業報告時点のもの |
― | ③①作成時から変更となった会社体制がわかる資料(当該変更の内容を示す公表資料、登記簿謄本、会計監査人の確認を受けた書類等) |
2)親会社及びその連結子会社の建設業の許可の通知書の写し |
出典:「親会社及びその連結子会社の間の出向社員に係る主任技術者又は監理技術者の直接的かつ恒常的な雇用関係の取扱い等について(改正) 」を参考に表を作成
出向社員・派遣社員は主任技術者・監理技術者になれるのか?まとめ
- 主任技術者・監理技術者になるためには直接的かつ恒常的な雇用関係にある必要があり、派遣社員や出向社員は主任技術者・監理技術者になることはできない
- 企業集団確認を受けると、直接的かつ恒常的な雇用関係があるものとして取り扱われ、親会社から連結子会社への出向社員を主任技術者・監理技術者とできる
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