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コラム

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2021.10.17

【建設業法解説】工事請負契約書の内容について

建設業法第19条は、建設工事請負契約のたびに、契約内容のうち特に重要な事項を列挙して書面に記載し、相互に交付しなければならないという旨を規定しています。

この記事では、建設業者が建設工事請負契約締結時に交わすべき書面について解説します。

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(建設工事の請負契約の内容)
第19条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

契約書に記載する事項

建設工事請負契約書に記載すべき事項として、建設業法では以下の15項目を定めています。

  • 工事内容
  • 請負代金の額
  • 工事着手の時期及び工事完成の時期
  • 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときはその内容
  • 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときはその支払の時期及び方法
  • 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  • 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
  • 価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
  • 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
  • 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときはその内容及び方法に関する定め注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
  • 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  • 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときはその内容
  • 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  • 契約に関する紛争の解決方法

工事内容の記載

工事内容とは、契約目的である工事の概要とその具体的内容を指します。

記載されるべき事柄は、工事目的物の構造・様式・品質・色彩などです。さらに、仮設工作物・施工方法・段取りなどに及ぶこともあります。

これらの事項を、契約書、設計図、仕様書などにおいて明確に記載することが求められます。

請負代金の額

請負代金の額は、工事内容とともに請負契約の最も重要な要素であり、明確に記載される必要があります。請負代金の定め方にはいろいろな方法がありますが、通常、代金の総額を定める方法がとられます。

なお、建設業法とは別で、建設リサイクル法13条において、再資源化に関する費用等を契約書面に明示することを義務付けていますので、あわせて注意しましょう。

工事着手の時期及び工事完成の時期

工事着手の時期及び工事完成の時期は、多くの場合、確定暦日で表示されますが、工事着手の時期が「契約の日から○○日以内」「関係官庁の許認可の日から○○日以内」などとされることもあり、また、工事完成の時期が、「着手の日から○○日以内」とされることもあります。

部分引渡しが約束されている場合には、その部分に関する完成時期についても記載するのが通常です。

工期の設定

工期設定等のガイドラインは、時間外労働の上限規制の適用に向けた取組みとして、適正な工期設定・施工時期の平準化を求めています。

現場技術者や下請の社員、技能労働者などを含め建設工事に従事するすべての者が時間外労働の上限規制に抵触するような長時間労働を行うことのないよう、当該工事の規模および難易度、地域の実情、自然条件、工事内容、施工条件等のほか、建設工事に従事する者の週休2日の確保等、下記の条件を適切に考慮するものとしています。

  • 建設工事に従事する者の休日の確保
  • 建設業者が施工に先立って行う、労務・資機材の調達、調査・測量、現場事務所の設置等の「準備期間」
  • 施工終了後の自主検査、後片付け、清掃等の「後片付け期間」
  • 降雨日、降雪・出水期等の作業不能日数

余裕期間制度

余裕期間とは、契約期間内であるが工期外であるため、受注者は監理技術者等の配置が不要であり、工事に着手してはならないとされる期間です。この期間内であっても、工事着手以外の工事のための準備は受注者の裁量で行うことができます。

余裕期間制度とは、契約ごとに、工期の30%を超えず、かつ、4か月を超えない範囲内で余裕期間を設定して発注し、工事開始日もしくは工事完了期限日を発注者が指定、または、受注者が選択できる制度です。この制度は、柔軟な工期の設定等を通じて、受注者が建設資材や建設労働者などが確保できるようにすることにより、受注者側の観点から平準化を図ることに資する趣旨のもので、工事の発注において積極的に活用することが期待されています。

支払の時期及び方法

民法において、請負代金の支払は、特約がない限り工事の目的物の引渡しと同時に、また引渡しを要しないときは、仕事完成と同時に支払うべきものとされています。しかし、実際の建設工事請負契約では、前払金、出来形部分に対する支払などが行われるのが一般的です。たとえば、前払金については、契約成立時や契約締結後○○日以内とすることがあります。

支払方法としては、現金払、手形払、銀行振込みなどがあります。これらの複数の方法をとる場合や出来高払の場合には、その支払方法についてより具体的な取決めを行い、後日の争いを予防することが望まれます。支払場所については、特約がない限り、注文者の現時の営業所・住所における支払とするのが一般的です。

請負代金債権譲渡の承諾

各種の標準約款では、発注者及び受注者は、相手方の書面による承諾を得なければ工事請負契約から生じる権利または義務を第三者に譲渡することまたは承継させることはできないものとされていますが、受注者が前払金の使用や部分払等によってもなおこの契約の目的物に係る工事の施工に必要な資金が不足することを疎明したときは、発注者は、特段の理由がある場合を除き、受注者の請負代金債権の譲渡について承諾をしなければならないとされる場合があります。受注者は、この承諾を得た場合には、請負代金債権の譲渡により得た資金をこの契約の目的物に係る工事の施工以外に使用してはならず、またその使途を疎明する書類を発注者に提出しなければなりません。

天災その他不可抗力

屋外の建設工事は、天候などの自然条件の影響を強く受けます。そこで、天災その他不可抗力の影響に関する規定をおくべきこととされています。

これには、地震・台風・集中豪雨のような各種の自然現象がまず考えられます。また、建設工事が騒擾・暴動などの人的要因によって妨げられることもありえますので、このような要因もここに含め、広く当事者の支配が及ばない要素によって建設工事の進捗が影響を受ける場合の工期延長、損害発生等の各種のリスクの負担を取り決めておくことが重要です。

工期の変更

不可抗力によって工期が遅れた場合には免責事由が認められるため不履行貴任としての損害賠償責任は生じませんが、あらためて適正な工期を明らかにする必要があります。

損害の負担及びその額の算定方法

前記のような不可抗力によっていずれかの当事者に何らかの損害が生じた場合には、その負担が問題となります。

不可抗力と考えられるような現象によって、工事目的部の一部または全部が滅失するようなかたちで建設工事が影響を受ける場合にも、通常はなお工事完成の債務は履行不能とはなりませんから、その場合には工事完成のために新たに増加費用が必要となることがあります。これをいずれの当事者が負担するかが問題となります。

また、不可抗力によって履行が不能となることもありえますので、やはりその場合の損害をどちらが負担するかという問題が生じます。

前者の増加費用は、仕事完成義務を負っている請負人の負担となるのが原則ですが、それをすべて請負人負担とすることについては民法の信義則に反するとされることもありえます。

また、後者の問題は、危険負担の問題として請負人の負担とされるのが原則です。

このように、民法上ではいずれも請負人の負担が原則ですが、建設工事約款などにおいては、これらの負担の相当部分が発注者の負担とされています。

請負代金の額又は工事内容の変更

運送賃・保管料・保険料・賃貸料・加工賃・修繕料などの物価等について大きな変動があった場合には、当初の契約内容に当事者を拘束することが相当でないと考えられることもあります。

長い履行プロセスが予定されている建設工事請負契約の場合には、その間の経済事情をはじめとする履行環境の変動が、当事者にとって大きな意味を持ちます。

物価等の著しい変動が生じた場合に、そのようなリスクを請負代金の額の変更または工事内容の変更というかたちで当事者間で分担することにつき、あらかじめ適切な取決めをしておくことが望ましいです。

引渡しの時期

完成した工事目的物の引渡しの時期については、それが遅延した場合の当事者の関係、たとえば、目的物の保管などをめぐって争いが生じかねません。また、報酬の支払時期との関係においても重要な意義をもちます。

そこで、引渡しの時期をこれらの点との関連もふまえ、明確に取り決めておくことが望ましいです。

他方、請負人が仕事が完成したとして注文者に対して検査・引取を求める場合に、注文者が正当な理由なくこれを拒むときは受領遅滞となり、請負人は、仕事の目的物の保管に関する注意義務が緩和され、自己の財産に対するのと同一の注意(善良な管理者の注意よりもやや軽減されたレベルの注意)をもって引渡しまで管理すれば足りることになります。

また、注文者の受領遅滞によって、請負人の履行費用が増加した場合には、その増加額は注文者の負担となります。

また、履行遅滞中に、履行の提供があったとき以後に両当事者の帰責事由なく履行が不能となった場合には、その履行不能は注文者の責めに帰すべき事由によって生じたものとして扱われます。

請負代金の支払いの時期

前払金や出来形部分に対する支払の取決めがある場合には、工事完成後の請負代金の支払としては、残代金の支払が問題となります。この点が明確となるよう、その支払の時期・方法を取り決めておく必要があります。

履行の遅滞その他債務の不履行

仕事の完成は請負人の債務の核心です。仕事の完成期日はポイント目のように契約で決められているのが通常で、期日までに仕事の完成がない場合には、債務不履行の責任が生じます。この場合に、注文者は、債務不履行に基づく損害賠償の請求をすることができます。ただし、その債務不履行が請負人の責めに帰することができない事由による場合には、注文者はこの損害賠償の請求をすることができません。

注文者による解除

注文者は、請負契約の解除をすることができます。この解除には、注文者が相当の期間を定めて請負人に履行を催告しその期間内に履行がなされない場合の解除と、請負人の不履行によって契約をした目的を達成することができない場合に関する催告を必要としない解除がありえます。

また、債務の一部の履行が不能である場合や、債務の一部について履行拒絶があった場合は、債権者は催告をすることなく契約の一部の解除をすることができます。

遅延利息

遅延利息(遅延損害金)の利率は、請負人が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって決まります。法定利率は、令和2年4月1日から年3%ですが3年ごとに見直しがなされます。

約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率によることになります。

違約金

債務不履行に陥った者が相手方に対して支払うべき金銭を違約金といいますが、民法は、違約金を損害賠償の予定と推定しています。

契約に関する紛争の解決方法

建設工事請負契約に関する紛争の解決手段として、建設工事紛争審査会というものが設けられています。

建設工事請負契約に関する紛争は専門性が高いため、建設工事紛争審査会によるあっせん、調停、仲裁の制度を設けて、適切な紛争解決を図ることとしています。

署名又は記名押印をして相互の交付

「署名」とは、自己の氏名を自らの手で書き記すことをいい、「記名押印」とは、何らかの方法で氏名を表示したうえで押印することです。このいずれかによって、契約書の作成者、契約の当事者を明らかにすることが求められます。

契約書を相互に「交付」するということは、同一の契約書を2通作成し各当事者が1部ずつ所持することです。

元請下請間において請負代金の額の合意が得られないため契約書面の取り交わしが行われていない段階で、元請負人が下請負人に対し下請工事の施工を強要したり、その後に下請代金の額を元請負人の指値により一方的に決定する行為は本条に違反することになります。

電子契約について

建設工事請負契約は、ここまでの解説のとおり書面の契約書を必要としていますが、一定の条件の下で電子化が可能とされています(同条3項)。

(建設工事の請負契約の内容)
第19条3項 建設工事の請負契約の当事者は、前二項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。この場合において、当該国土交通省令で定める措置を講じた者は、当該各項の規定による措置を講じたものとみなす。

【国土交通省】電子契約について

注文書及び請書による契約の締結について

建設工事の請負契約は、請負契約書を交わすことが原則ですが、建設業者間の実際の取引現場においては注文書及び請書の形態により請負契約が締結されている場合が多いです。

注文書・請書による請負契約の締結は、以下の要件すべてを満たす場合に認められます。

基本契約書を締結した上で注文書・請書を交わす場合

  • 基本契約書には、個別の注文書及び請書に記載される事項を除き、法第19条第1項各号に掲げる事項を記載し、当事者の署名又は記名押印をして相互に交付すること
  • 注文書及び請書には、法第19条第1項第1号から第3号までに掲げる事項その他必要な事項を記載すること
  • 注文書及び請書には、それぞれ注文書及び請書に記載されている事項以外の事項については基本契約書の定めによるべきことが明記されていること
  • 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること

注文書・請書の交換のみによる場合

  • 注文書及び請書のそれぞれに、同内容の基本契約約款を添付又は印刷すること
  • 基本契約約款には、注文書及び請書の個別的記載事項を除き、法第19条第1項各号に掲げる事項を記載すること
  • 注文書又は請書と基本契約約款が複数枚に及ぶ場合には、割印を押すこと
  • 注文書及び請書の個別的記載欄には、法第19条第1項第1号から第3号までに掲げる事項その他必要な事項を記載すること
  • 注文書及び請書の個別的記載欄には、それぞれの個別的記載欄に記載されている事項以外の事項については基本契約約款の定めによるべきことが明記されていること
  • 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること

請負契約書の作成例

建設工事請負契約書【例】

1.工事名 
  ○○邸外壁塗装工事
2.工事場所 
  東京都新宿区○○1-1-1
3.工期 
  自 令和3年4月1日
  至 令和3年5月5日
4.工事を施工しない日
  土曜日・日曜日・祝日
5.工事を施工しない時間帯
  18:00~8:00
6.請負代金額
  金5,500,000円
 〈うち消費税の額500,000円〉
7.契約保証金 免除
 上記工事について、発注者と受注者は、各々の対等な立場における合意に基づいて、別添の条項によって公正な請負契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行するものとする。
 また、受注者が共同企業体を結成している場合には、受注者は、別紙の共同企業体協定書により契約書記載の工事を共同連帯して請け負う。
 本契約の証として本書 通を作成し、発注者及び受注者が記名押印の上、各自一通を保有する。

令和3年3月10日

発注者 東京都○○区○○1-1-1
    ○○工業株式会社
    代表取締役 ○○ ○○ ㊞
受注者 東京都○○区○○1-1-1
    ○○工業株式会社
    代表取締役 ○○ ○○ ㊞

別添条項【例】

工事請負契約まとめ

通常の契約は書面によらず口頭でも成立しますが、建設工事においては請負契約書の作成が義務づけられています。

必ず記載しなければならない事項も条文において明確に定められています。

当事者間でのトラブル防止はもちろんですが、建設業法遵守のためにも、適正な内容の請負契約書を作成し保管するようにしましょう。

行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

建設業特化の行政書士法人ストレートの代表行政書士。年間申請数は300件を超える。建設業者のみならず行政書士、他士業からも多くの相談を受けるプロが認める専門家。誠実、迅速な対応で建設業者の発展に貢献します。

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