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コラム

COLUMN
2023.06.12

東京都で公共工事を受注する方法を解説

建設業者の発展において、元請工事を請負う体制の整備はとても重要です。

下請工事だけで十分な利益を上げている建設業者もたくさんありますが、「元請が傾いたら連鎖して経営不振になってしまう」という不安は残ります。

この記事は、次のようなお考えをお持ちの方に向けて書いています。

  • 公共工事を受注して元請体制を整えたい
  • 公共工事の入札に参加する方法を知りたい
  • 売上・利益を増やして儲かる会社になりたい

建設業専門の行政書士として年間300社以上の決算内容を確認しているなかで、圧倒的に売上、利益を伸ばし成長しているのは、公共工事の入札に成功しているお客様ばかりであるということに気が付きました。

ただし、なんとなく経営事項審査(経審)を受けて、なんとなく入札に参加してみても良い結果にならないことが多いので注意が必要です。

どの行政機関から、どのような業種で、どのくらいの規模の工事を年間何件受注したいのかという目標を明確に定め、計画的に公共工事の入札を進めることが大切です。

この記事では、東京都または東京都内の市区町村が発注する工事を受注したい方に向けて、その仕組み、流れ、手続き方法等を行政書士法人ストレートが解説します。

公共工事を受注するメリット

まずは、公共工事を受注することのメリットを3つ紹介します。

  • 売上・利益が上がる
  • 資金繰りが良くなる
  • 信用力が高まる

売上・利益が上がる

公共工事を落札すると、元請業者の立場で工事を施工することになります。

建設業は、ひとつの建設工事を複数の建設業者が施工する構造が基本であり、元請業者が一番売上単価が高く、利益率も一番良いです。

上流にいることが大切

自社の請負金額よりも高い金額で下請業者に発注するとその時点で赤字なので当然といえば当たり前のことですが、ここが大切で、建設業者として今よりも成長したいのであれば、二次下請けよりも一次下請け、一次下請けよりも元請を目指すべきです。

資金繰りが良くなる

成長過程の中小建設業者にとって、資金繰りのお悩みはつきものです。例えば、規模の大きな工事を受注できるようになると、その工事を施工するための材料、人件費、外注費、経費も大きくなり、請負金額が払い込まれるまでの経営が苦しくなるケース等が考えられます。

公共工事では、工事請負金額のうち4割前後が前払いされることがほとんどです。

工事の発注者は、資金ショートによる落札者の倒産、資金不足による不良工事等が起こること非常に困るので、工事がしっかり履行されるために必要な仕組みといえます。

融資でも有利になる

元請業者として利益が上がっていることはもちろんですが、公共工事の前受け金によりキャシュフローが良くなり、決算だけでなく実態上においても倒産しにくい会社になるため、銀行も融資をしやすくなります。

信用力が高まる

建設業に限る話ではないですが、会社の信用力は、「お客様に選ばれる基準」「取引先に選ばれる基準」として極めて重要です。

公共工事を元請として受注、施工することは、会社の売上を上げるだけでなく、信用力にも大きく関係します。

公共工事の実績としてアピールすることで、地域の住民や建設業者から「あの小学校の改修工事をした会社」「あの道路を舗装した会社」と一目置かれる存在となります。

採用でも有利になる

建設業界の就職先、転職先を検討する際、公共工事を積極的に受注、施工している実績を上げている会社に魅力を感じるようです。

公共工事に関する2つの誤解

公共工事の入札に参加していない建設業者の多くが、次の2つの誤解をしています。

  • 規模の大きな工事しかない
  • 大手業者と戦っても勝てない

この2つはいずれも大きな誤解であり、入札制度の実態はまったく異なっています。

規模の大きな工事しかないという誤解

公共工事と聞くと、「新築工事」「道路工事」「トンネル工事」などの大規模な工事を思い浮かべるかもしれませんが、実は1,000万円未満の「設備工事」「改修工事」などの専門工事も数多くあります。

実際に東京都が発注した工事の事例を載せておきます。

これは実際に東京東京消防庁が発注した新宿消防署2階ホール天井復旧工事で、請負金額は1,760,000円です。

このように、決して大規模ではない公共工事もたくさんあるので、自社の規模、施工能力に見合った工事を狙い撃ちして入札に参加することが大切です。

大手業者と戦っても勝てないという誤解

公共工事の入札には、ゼネコンや、地域で実績豊富な老舗の建設業者が参加しているから自社が参加しても落札できないのではないかと考えている方も多いですが、これも誤解です。

入札参加資格を有する建設業者は、入札に参加する業種ごとに経営事項審査の結果や工事施工実績等を基準に、A、B、C、D等と格付け(ランク付け)されます。

※格付けがされない業種や自治体もあります

そして、東京都や市区町村が発注する公共工事には「発注等級」と「受付等級」というものがあり、工事の発注金額の規模によって入札に参加できる建設業者を限定しているのです。

公共工事の発注等級と受付等級

つまり、大手企業や大企業はAランク同士として受付等級Aランクの工事について入札し、例えばDランクの中小建設業者は、経営事項審査や工事施工実績がある程度近いレベルのDランクのライバルと、受付等級Dランクの工事について入札をすることになります。

東京都の発注金額と等級(令和5年度)

舗装工事(道路舗装工事)

A 2億円以上
B 8千万円以上2億円未満
C 3千万円以上8千万円未満
D 7百万円以上3千万円未満
E 7百万円未満

土木工事(橋りょう工事、河川工事、水道施設工事、下水道施設工事及び一般土木工事)

A 3億5千万円以上
B 1億6千万円以上3億5千万円未満
C 4千万円以上1億6千万円未満
D 1千万円以上4千万円未満
E 1千万円未満

建築工事

A 4億4千万円以上
B 2億2千万円以上4億4千万円未満
C 6千万円以上2億2千万円未満
D 1千6百万円以上6千万円未満
E 1千6百万円未満

設備工事(電気工事、給排水衛生工事、空調工事)

A 5千5百万円以上
B 1千8百万円以上5千5百万円未満
C 6百万円以上1千8百万円未満
D 6百万円未満

発注自治体ごとに入札参加資格が必要

公共工事を入札するには、経営事項審査を受けたうえで、入札に参加する自治体への参加資格申請を行い、承認され、名簿に載る必要があります。例えば、東京都が発注する工事を入札するには東京都に入札参加資格申請、新宿区が発注する工事を入札するには新宿区に入札参加資格申請をします。

東京都、また、東京都内の市区町村の入札参加資格申請は、いずれもインターネット上のサイトから電子申請を行います。

市区町村への申請は、共同運営という非常に便利なシステムが用意されていて、同じ内容で同時に複数の自治体へ申請することができます。

東京都電子調達システム

東京電子自治体共同運営電子調達サービス

公共工事入札に参加までの流れ

公共工事入札に参加する資格を取得するまでの大まかな流れを紹介します。

STEP
1
建設業許可

公共工事入札参加には、建設業許可業者が必須です。まずは建設業許可を取得しましょう。

STEP
2
経営状況分析申請

登録経営状況分析機関に経営状況分析申請をします。

STEP
3
建設業決算報告

決算終了後4か月以内に建設業許可における決算変更届を提出します。

STEP
4
経営事項審査申請

建設業許可行政庁へ、経営事項審査申請をします。

STEP
5
入札参加資格申請

入札参加を希望する発注機関へ、それぞれ定められた方法に従い入札参加資格審査申請を行います。

上記1~5の手続きは、すべて行政書士が代理で進めることが可能です。

入札参加手続きは毎年行う

公共工事の入札参加者は、常に最新の状態の経営状況や技術力が基準となるよう、経営状況分析申請~入札参加資格審査申請は、毎年決算を迎えるたびに手続きをしなければなりません。

ただし、東京都の入札参加資格申請の継続については、2年度に一度定期受付とされています。

経営事項審査申請とは

経営事項審査とは、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない手続きで、通称「経審(ケイシン)」と呼ばれています。

公共工事発注機関は、入札に参加しようとする建設業者の資格審査において、「客観的事項」と「主観的事項」の審査結果を点数化することにより順位付け、格付けを決定します。

このうち客観的事項の審査が経営事項審査の点数となります。

経営事項審査の有効期間

経営事項審査の有効期間は、該当の審査基準日(決算日)から1年7ヶ月です。したがって、入札参加資格を継続するためには、次年度の結果通知書を有効期限までに受領しなければなりません。

東京都の経営事項審査は予約制なのですが、次期によっては最速の予約日が1か月以上先になることもあります。また、国土交通省は経営事項審査申請の日から結果通知書の発送までに少し時間がかかるので、有効期限内に手続きが完了するようスケジュールに余裕をもって準備することが大切です。

3月決算の場合の有効期間

図のように、例えば3月決算の会社の場合、令和4年3月31日を基準日として経営事項審査の有効期限は、その1年7ケ月後の令和5年10月31日なので、経営事項審査を切らせないためには、令和5年3月31日を基準日として経営事項審査申請の結果通知書を、令和5年の10月中には受け取らなければなりません。

経営事項審査の審査項目

経営事項審査では、以下の4項目を数値化して評価が決定されます。

  • 経営状況
  • 経営規模
  • 技術力
  • その他の審査項目

なお、「経営状況の分析」については、国土交通大臣が登録した経営状況分析機関が行います。

経営状況とは

公共工事を受注しようとする建設業者の経営を、会計的な立場から経営状況分析機関が点数化するものです。

これにより経営状況分析評点「Y」が算出されます。

経営規模とは

経営規模は「X1」と「X2」の2つの要素で構成されていて、X1は「直近2年または3年の完成工事高」、X2は「自己資本額と平均利益額」から算出されます。

技術力

技術力は「Z」といい、「元請完成工事高」と「技術職員数」から算出されるものです。

その他の審査項目

その他の審査項目(社会性等)は、「W」といい、保険加入、営業年数、防災協定、退職金制度、建設機械保有等のさまざまな項目から算出します。

経営事項審査の総合評定値

経営状況Y、元請工事高X1、経営規模・自己資本額X2、技術力Z1、社会性Wを次の計算式に当てはめて総合評定値Pを算出します。

総合評定値P=0.25X1+0.15X2+0.2Y+0.25Z+0.15W

総合評定値Pは、入札参加資格の等級格付けにおける「主観点数」として評価されるので、公共工事入札で成果を上げるには、自社が狙っている等級になるために、P点を意識した日頃の経営、また、経営事項審査申請を行うことが大切です。

Y・X1・X2・Z・Wの評点算出方法については、経営事項審査解説の記事をご覧ください。

入札参加は行政書士にお任せください

入札参加資格取得までに必要な手続きは非常に複雑であり、審査も厳しいものです。

  • 面倒な手続きは専門家に外注したい
  • 入札参加資格取得をスムーズに進めたい
  • 経営事項審査の評点をアップさせたい
  • 公共工事を戦略的に受注したい

特に上記のような建設業者は、建設業に強い行政書士に相談してみることをおすすめします。

行政書士法人ストレートでは、個人事業主から上場企業まで多くの企業に建設業許可、公共工事入札に関するパートナーとしてご利用いただいております。

  • これから公共工事入札に参加してみたい
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という方からのお問い合わせをお待ちしております。

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行政書士 大槻 卓也
執筆者

建設業特化の行政書士法人ストレートの代表行政書士。年間申請数は300件を超える。建設業者のみならず行政書士、他士業からも多くの相談を受けるプロが認める専門家。誠実、迅速な対応で建設業者の発展に貢献します。

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当社は、建設業関連業務に特化している行政書士法人です。東京都、神奈川県、埼玉県を中心に建設業許可に関する手続きを年間300件以上代行しており、難易度の高い申請の実績も豊富です。

他の行政書士には許可をとれないと言われた事業者様の建設業許可を、問題なくスムーズに取得できるケースも非常に多いです。行政書士の業務は多岐にわたるので、建設業許可に詳しくない事務所も当然あります。

「近所だから」「安いから」という理由だけで依頼する行政書士を選ぶと、許可取得までに時間がかかったり、許可を取得できないということも考えられます。特殊な法律やルールの多い建設業に関する手続きは、専門の行政書士にご相談いただけることを願います。