建設業法では、一括下請負(工事の丸投げ)が禁止されていますが、なぜ一括下請負は禁止されているのでしょう?
禁止の理由と、どのような場合に一括下請負になるかの判断、例外的に一括下請負が行える場合について1つ1つ確認していきましょう。
この記事では、
- ①一括下請負の禁止とは何か
- ②禁止されている理由
- ③違反した場合の罰則
- ④一括下請負に該当するか否かの判断について
- ⑤例外として一括下請負が認められる場合とは?
について、建設業専門の行政書士法人ストレートが解説します。
目次
一括下請負の禁止とは
建設業者は請け負った建設工事を、どのような方法であれ一括して他人に請け負わせてはならず(建設業法第22条第1項)、建設業を営む者は建設業者から当該建設業者の請け負った建設工事を一括して請け負ってはならないとされています。(同条2項)
これを一括下請負の禁止といいます。
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(一括下請負の禁止)第二十二条 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。~以下省略~
一括下請負が禁止されている理由
①信頼の問題
発注者が建設工事の請負契約を締結するに際して建設業者に寄せた信頼を裏切ることとなることが理由の1つです。
発注者は建設業者の過去の施工実績、施工能力、社会的信用等あらゆる評価を鑑みて信頼し、契約をしています。それを一括して他人に請け負わせれば、発注者の信頼を裏切ることになってしまいます。
②建設業全体への悪影響
一括下請負の容認によって、中間搾取や工事の質の低下、労働条件の悪化、実際の工事施工の責任の不明確化等が発生する上、施工能力のない商業ブローカー的不良建設業者の輩出を招きかねません。
一括下請負を容認すれば、建設業の健全な発達を阻害するおそれがあります。
一括下請負の禁止に違反した場合の罰則
一括下請負の禁止に違反した建設業者は、行動の態様、情状等を勘案し、再発防止を図る観点から、監督処分(営業停止)を受けることになります。
一括下請負の処分対象は元請負人だけでなく、下請負人も対象となります。
また、公共工事について一括下請負を行った場合、発注者は受注者である建設業者が建設業許可を受けた国土交通大臣または都道府県知事および当該事実に係る営業が行われる区域を管轄する都道府県知事に対してその事実を通知し、発注者と許可行政庁とが連携して厳正に対処されることとなります。
一括下請負に該当するかどうかの判断
建設業者は請け負った建設工事の完成について誠実に履行しなければなりません。
次のような場合、元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与していると認められるときを除き、一括下請負に該当します。
- ①請け負った建設工事の全部またはその主たる部分について、一括して他の業者に請け負わせる場合
- ②請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工事を一括して他の業者に請け負わせる場合
なお、一括下請負に該当するか否かの判断は、元請負人が請け負った建設工事1件ごとに行い、建設工事1件の範囲は原則として請負契約単位で判断されます。
「実質的に関与」とは?
「実質的に関与」とは、元請負人が自ら次の事項を行う事をいいます。
- ①施工計画の作成
- ②工程管理
- ③品質管理
- ④安全管理
- ⑤技術的指導
- ⑥その他
なお、元請負人にこれらの業務を行う能力がない場合も、一括下請負になります。
元請・下請それぞれが果たすべき事項
元請が果たすべき役割 | 下請が果たすべき役割 | |
施工計画の作成 |
・請け負った工事全体の施工系計画書等の作成 ・下請負人の作成した施工要領等の確認 ・設計変更等に応じた施工計画書等の修正 |
・請け負った範囲の建設工事に関する施工要領書等の作成 ・下請負人が作成した施工要領書等の確認 ・元請負人等からの指示に応じた施工要領書等の修正 |
工程管理 |
・請け負った建設工事全体の進捗確認 ・下請負人間の工程調整 |
・請け負った範囲の建設工事に関する進捗確認 |
品質管理 |
・請け負った建設工事全体に関する下請負人からの施工報告確認 ・必要に応じた立会確認 |
・請け負った範囲の建設工事に関する立会確認(原則) |
安全管理 |
・安全確保のための協議組織の設置および運営 ・作業場所の巡視等建設工事全体の労働安全衛生法に基づく措置 |
・協議組織への参加 ・現場巡回への協力等請け負った範囲の建設工事に関する労働安全衛生法に基づく措置 |
技術的指導 |
・建設工事全体ににおける主任技術者の配置等法令遵守や職務遂行の確認 ・現場作業に係る実地の総括的技術指導 |
・請け負った範囲の建設工事に関する作業員の配置等法令遵守 ・現場作業に係る実地の技術指導 |
その他 |
・発注者との協議・調整、下請負人からの協議事項への判断・対応 ・建設工事全体のコスト管理 ・近隣住民への説明 |
・自らが受注した建設工事の請負契約の注文者との協議 ・下請負人からの協議事項への判断・対応 ・元請負人等の判断を踏まえた現場調整 ・請け負った範囲の建設工事に関するコスト管理 ・施行確保のための下請負人調整 |
現場に技術者を置いているだけでは「実質的に関与」にならない
現場に技術者を置いているだけでは、上記の事項を行ったことにはなりません。
また、現場に元請負人との間に「直接的かつ恒常的な雇用関係」を有する適格な技術者が置かれないと、実質的に関与しているとはいえないので注意が必要です。
例外として一括下請負ができる場合がある?
入札契約適正化法に規定する公共工事については、一括下請負が全面的に禁止されています。
しかし、民間工事については、元請負人が一括下請負に付することについてあらかじめ発注者から書面による承諾を得ている場合は例外的に認められるとされています。(建設業法第22条第3項)
なお、民間工事でも共同住宅を新築する建設工事や、多数の者が利用する施設については禁止されています。
一括下請負の禁止の例外については、次の事に注意しましょう。
- ①建設工事の最初の注文者である発注者の承諾が必要で、その承諾は一括下請負に付する以前に書面により受け付けなければならない。
- ②発注者の承諾を受けなければならない者は、請け負った建設工事を一括して他人に請け負わせようとする元請負人である。
したがって、下請負人が請け負った建設工事を一括して再下請負に付そうとする場合も、発注者(元請負人ではなく)の書面による承諾が必要ということです。
事前に発注者から承諾を得て一括下請負に付した場合でも、元請負人は請け負った建設工事について、建設業法の規定により求められている責任(現場への技術者の配置等)を果たさなければならないことに変わりありません。
- 一括下請負を行った建設業者は、当該工事を実質的に行っているとは認められないので、経営事項審査における完成工事高に、当該建設工事に係る金額を含むことはできません。
一括下請負の禁止まとめ
- 発注者の信頼への裏切りや、建設業の健全な発達を阻害する恐れがあることが一括下請負が禁止されている理由
- 一括下請負の禁止に違反した場合、原則として営業停止の処分を受ける
- 一括下請負に該当するか否かの判断は、元請負人が請け負った建設工事1件ごとに行われる(建設工事1件の範囲は原則として請負契約単位)
- 民間工事において、元請負人が一括下請負に付することについてあらかじめ発注者から書面による承諾を得ている場合は、例外的に一括下請負が許される(共同住宅を新築する建設工事や、多数の者が利用する施設については×)
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