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COLUMN
2023.06.14

とび土工工事業の建設業許可をとる!工事内容や要件を解説

建設業許可における「とび土工工事業」は工事内容の範囲が広く、許可を取得している建設業者が非常に多い業種です。

この記事では、

  • とび土工工事業とは?
  • 工事の具体的な内容
  • 専任技術者の要件
  • 実務経験の証明方法(必要書類)

について、とび土工工事業の建設業許可を取得することを考えている人のために、建設業専門の行政書士法人ストレートが解説していきましょう。

とび土工工事業とは

とび土工工事業は、500万円以上の「とび・土工・コンクリート工事」を請負うのに必要となる許可業種で、27種類の専門工事業のうちの1つです。

元請業者として、とび・土工・コンクリート工事を請負い、下請業者に合計4,500万円以上発注する場合は、とび土工工事業の特定建設業許可が必要となるので注意しましょう。

とび・土工・コンクリート工事の内容

とび・土工・コンクリート工事とは、一般的に次のような工事と定義されています。

  • ①足場組立、機械器具・資材等重量物の運搬配置、鉄骨等組立等の工事
  • ②くい打ち・抜き及び場所打ぐい等の工事
  • ③土砂等の掘削、盛上げ、締固め等の工事
  • ④コンクリートにより工作物を築造する工事
  • ⑤その他基礎的又は準備的工事

足場工事、土工事、コンクリート工事は文字通りなのでイメージしやすいですが、「重量物の運搬配置」や「鉄骨組立」、「その他基礎的工事」なども含まれるので、とび土工工事業の範囲は非常に広く設定されています。

以下に①~⑤それぞれにつき具体的な工事名称の例を記載するので確認しておきましょう。

①足場組立、機械器具・資材等重量物の運搬配置、鉄骨等組立等の工事に関する具体的な工事名

とび工事 ひき工事 足場等仮設工事
重量物の揚重運搬配置工事 鉄骨組立て工事 コンクリートブロック据付け工事

②くい打ち・抜き及び場所打ぐい等の工事に関する具体的な工事

くい工事 くい打ち工事
くい抜き工事 場所打ぐい工事

③土砂等の掘削、盛上げ、締固め等の工事に関する具体的な工事

土工事 掘削工事 根切り工事
発破工事 盛土工事

④コンクリートにより工作物を築造する工事に関する具体的な工事

コンクリート工事 コンクリート打設工事
コンクリート圧送工事 プレストレストコンクリート工事

⑤その他基礎的又は準備的工事に関する具体的な工事

地すべり防止工事 地盤改良工事 ボーリンググラウト工事 土留め工事
仮締切り工事 吹付け工事 法面保護工事 道路付属物設置工事
屋外広告物設置工事(鋼構造物工事における屋外広告工事以外のもの) 捨石工事 外構工事 はつり工事
切断穿孔工事 アンカー工事 あと施工アンカー工事 潜水工事

なお、上記は例であり、この他にも多くのとび・土工・コンクリート工事に該当する工事があります。

「建築一式工事を請けていればとび土工工事業も制限なく請負える」は誤解

「建築一式の建設業許可を受けていれば、鉄骨組立工事も金額制限なく請負える」や「土木一式の許可を受けていれば、掘削工事も金額制限なく請負える」など、一式工事業の許可を受けていればとび土工工事業の許可はいらないという誤解は非常に多く見受けられます。

しかし、一式工事業の建設業許可をもって金額制限なく請負えるのはあくまで「一式工事」のみです。

例えば、新築等の建築一式工事ではなく、足場組立工事をメインとして請負う場合は、建築工事業ではなくとび土工工事業の建設業許可が必要となるので注意しましょう。

とび土工工事業の専任技術者要件

建設業許可を受けるには、業種ごとに一定以上の資格または実務経験を有する人を営業所に配置しなければなりません。

とび土工事業の専任技術者になれる資格

  • 一級建設機械施工技士
  • 二級建設機械施工技士
  • 一級土木施工管理技士
  • 二級土木施工管理技士(種別:鋼構造物塗装を除きます。)
  • 一級建築施工管理技士
  • 二級建築施工管理技士(躯体)
  • 技術士(部門:建設、水産、森林に限ります。)
  • 技能士(検定職種:ウェルポイント施工、型枠施工、とび・とび工、コンクリート圧送施工に限ります。)
  • 地すべり防止工事認定者(登録後1年以上の実務経験が必要です。)
  • 登録基礎ぐい工事認定者 
  • 監理技術者資格者(とび土工)

特定建設業許可の場合は、上記資格のうち、一級資格者、技術士、監理技術者資格者だけが専任技術者になることができます。

指定学科卒業+実務経験により専任技術者になる場合

また、とび土工工事業に係る指定学科の

  • 高校を卒業している場合は卒業後5年
  • 大学を卒業している場合は卒業後3年

のとび・土工・コンクリート工事に関する実務経験を有していれば、専任技術者になることができます。

とび土工工事業に係る指定学科

  • 土木工学
  • 建築学

上記の学科の高校または大学を卒業している場合は、必要な実務経験期間の短縮が認められます。

土木工学・建築学に関する学科として認められる具体的な学科名には次のようなものがあります。

建築学に関する学科
環境計画科 建築科 建築システム科 建築設備科
建築第二科 住居科 住居デザイン科 造形科
土木工学に関する類似学科
開発科 海洋科 海洋開発科 海洋土木科
環境造園科 環境科 環境開発科 環境建設科
環境整備科 環境設計科 環境土木科 境緑化科
環境緑地科 建設科 建設環境科 建設技術科
建設基礎科 建設工業科 建設システム科 建築土木科
鉱山土木科 構造科  砂防科 資源開発科
社会開発科 社会建設科 森林工学科 森林土木科
水工土木科 生活環境科学科 生産環境科 造園科
造園デザイン科 造園土木科 造園緑地科 造園林科
地域開発科学科 治山学科 地質科 土木科
土木海洋科 土木環境科 土木建設科 土木建築科
土木地質科 農林土木科 緑地造園科 緑地科
緑地土木科 林業工学科 林業土木科 林業緑地科
農業開発科 農業技術科 農業土木科 農林工学科
農業工学科

類似学科については、学科名の末尾の「科」「学科」「工学科」は、他のいずれにも置き換えが可能です。ただし、青色表記の「森林工学科」「農林工学科」「農業工学科」「林業工学科」については、置き換えることができません。

上記の類似学科名に記載がない学科でも、履修内容が上記のような土木・建築に関するものであると認められる場合は、個別相談により指定学科とみなしてもらえるケースもあります。

この場合は、卒業証明書とあわせて履修証明書や成績証明書などを取り寄せ、どのような内容の学習をしたかを提示して事前に審査庁に相談しましょう。

実務経験により専任技術者になる場合

上記のような資格や学歴がなくても、とび・土工・コンクリート工事の施工について10年以上の実務経験を有する人は、とび土工工事業の専任技術者になることができます。

改正による要件緩和

なお、令和5年7月1日からは実務経験による技術者資格要件の緩和が施行されます。

これまでは、大学・高校の指定学科を卒業していない場合は実務経験が10年以上ないと専任技術者になれませんでしたが、「施工管理技士試験合格+実務経験」によって専任技術者の要件を満たすことが可能になります。

ここでいう合格者とは、第一次検定合格者のみではなく、第一次検定のみの合格者(技士捕)も含みます。

技術検定種目 同等とみなす指定学科
土木・造園工事施工管理技士 土木工学
建築施工管理技士 建築学
電気工事施工管理技士 電気工学
管工事施工管理技士 機械工学

必要な実務経験年数は、次のとおりになります。

  • 一級合格者の場合は大学卒業と同様に3年
  • 二級合格者の場合は高校卒業と同様に5年

改正後に専任技術者になれる実務経験者

学歴等 実務経験
大学・短大卒業(指定学科) 卒業後3年
高等学校(指定学科) 卒業後5年
一級1次検定合格 合格後3年
二級1次検定合格 合格後5年
上記以外 10年

なお、この緩和は一般建設業のみに関係することであり、指定建設業・電気通信工事業以外の建設業において適用されることになります。

指定建設業とは?
土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業

配置技術者も同様に緩和される

建設工事において必要な配置技術者についても同様の扱いとなります。

とび・土工・コンクリート工事の実務経験証明方法

とび・土工・コンクリート工事の実務経験を証明するうえで最初に確認するべきことは、経験を積んだ企業が、在籍時にとび土工工事業の建設業許可を受けていたかどうかです。

各ケースの必要書類は次のとおりです。

許可あり企業での経験の場合

  • 被保険者記録照会回答票
  • 建設業許可通知書の写し
  • 専任技術者証明書
  • 実務経験証明書
  • 指定学科の卒業証明書
  • 健康保険被保険者証の写し

許可なし企業での経験の場合

  • 被保険者記録照会回答票
  • 工事請負契約書等
  • 専任技術者証明書
  • 実務経験証明書
  • 指定学科の卒業証明書
  • 健康保険被保険者証の写し

被保険者記録照会回答票とは

この書類は、いわゆる専任技術者になろうとする人のこれまでの年金記録です。

年金事務所に行くと即日発行してもらえる書類で、どの企業の厚生年金保険にいつからいつまで加入していたかを確認できます。

この書類により、まずはとび・土工・コンクリート工事を経験した企業に常勤で在席していたことを証明します。

POINT
審査庁によっては取締役として登記されていれば厚生年金保険に加入していなくても過去の常勤を認めるというルールを設けている場合があります。
実務経験証明証明の準備着手時に申請先の自治体に確認するといいでしょう。

建設業許可通知書の写しとは

建設業許可新規取得時、5年に一度の更新時にすべての会社・個人に発行される書類です。

A4一枚の普通紙で発行されますが、とても重要な書類で、建設業許可の業種や有効期限が記載されています。

建設業許可通知書にとび土工工事業と記載があり、その有効期間中、被保険者記録照会回答票によってその企業に在籍していたことを証明できれば、その期間におけるとび・土工・コンクリート工事の実務経験が認められることが多いです。

ただし、通知書に記載されている許可の有効期間の満了時に更新手続きをせず、許可が抹消されている企業については、抹消の日までの経験を認めてくれる行政庁と認めてくれない行政庁に分かれるので、必ず事前に確認しましょう。

POINT
建設業許可申請の実務においては、許可の通知書がなくても、行政側が行政内での確認により許可の有無を確かめてくれる場合が多いです。
許可の通知書が手に入らない場合は申請先の窓口に問い合わせしましょう。

工事請負契約書等とは

とび土工工事業の建設業許可を受けていない企業でも、500万円以下のとび・土工・コンクリート工事については請負い及び施工をすることができます。

このような、とび土工工事業の建設業許可を受けていない企業における経験も専任技術者の実務経験年数に含めることができますが、この場合、とび・土工・コンクリート工事を請負っていたことを証明するため、工事請負契約書等を証明する期間通年分用意する必要があります。

工事請負契約書がない場合は、

  • 注文書
  • 請書
  • 請求書(通帳で入金確認)

などでも、とび・土工・コンクリート工事を請負い、施工していることが確認できれば経験は認められます。

専任技術者証明書とは

建設業許可申請書類のなかに、様式八号の専任技術者証明書という書式があります。

【例】様式第八号 専任技術者証明書(東京都都市整備局Webサイト)

ここには、専任技術者の氏名、住所、生年月日等の個人情報の他、専任技術者が担当する業種ごとの資格の種類または実務経験など、どのように要件を満たしているのかを、記号により記載することになっています。

実務経験証明書

続いて、様式第九号の実務経験証明書という書式があります。

【例】様式第九号 実務経験証明書(東京都都市整備局Webサイト)

この書類は、専任技術者の要件を実務経験で満たす場合にのみ必要となる書類で、資格により要件を満たす場合は不要です。

実際に担当したとび・土工・コンクリート工事について具体的に記載し、その経験年月が必要な期間を満たすように記載しましょう。

前記の被保険者記録照会回答票における厚生年金加入の期間、とび土工工事業の建設業許可が有効であった期間、または工事請負契約等が用意できる期間と同期間の経験を記載する必要があります。

指定学科の卒業証明書とは

前記の土木工学または建築学に関する学歴により実務経験証明年数を短縮する場合、学校から卒業証明書を取り寄せて、基本的には原本を提出することになっています。

卒業証明書の取り寄せ方法は、学校ごとに案内があるはずなので、卒業した学校に確認してみましょう。

健康保険被保険者証の写しとは

専任技術者が、建設業許可を申請する企業に現在常勤であることを健康保険証の写しを提出することにより証明します。

後期高齢者である場合や、健康保険組合のカードデザインの都合上、健康保険証に申請する企業名が記載されていない場合は、健康保険証の写しとあわせて、次のいずれかの書類等により常勤を証明する必要があります。

  • 健康保険・厚生年金保険の標準報酬決定通知書
  • 住民税特別徴収税額決定通知書
  • 法人の場合は直近の法人税確定申告書における役員報酬明細
  • 個人事業の場合は直近の確定申告書
  • 被保険者記録照会回答票
  • 健康保険組合発行の資格証明書

※上記一覧は申請先ごとの審査基準により異なる可能性があります。

※神奈川県等、一部の審査庁では専任技術者が代表取締役である場合には健康保険証の写しを求めないという取り扱いもあります。

専任技術者の詳しい解説はこちら

とび土工工事業まとめ

とび土工工事業は、一人親方からゼネコンまで、あらゆる規模の企業が取得しており、建築工事業や土木工事業などとあわせて申請することが多い業種です。

とび土工工事業に対応した資格者を専任技術者として申請する場合は、今後、とび・土工・コンクリート工事の請負い予定がなくても同時に取得しておきましょう。

この記事ではとび土工工事業にフォーカスして解説しましたが、建設業許可はその他の要件も含めて非常に複雑で厳しいルールが多く定められています。

建設業許可全体の要件はこちら

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行政書士 大槻 卓也
執筆者

建設業特化の行政書士法人ストレートの代表行政書士。年間申請数は300件を超える。建設業者のみならず行政書士、他士業からも多くの相談を受けるプロが認める専門家。誠実、迅速な対応で建設業者の発展に貢献します。

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